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2020年1月に新型コロナウイルスの国内初感染が確認されて以来、世界的に流行する中、4月には政府より緊急事態宣言が発出され外出自粛が要請された。これを受け広告会社各社では「原則リモートワーク」を基本とした業務体制へ移行した。
情報システム委員会参加各社は、従来から「働き方改革」や「東京オリンピック・パラリンピック」を念頭に置き、社員がリモートワークできる環境の整備を進めていたが、「全社員一斉にリモートワーク」という想定外の事態に直面することとなった。
今年度の情報システムアンケートは、この想定外の事態に各社の情報システム部門はどう対応したのか?を明らかにし、秋冬に到来すると予想されている第2波、第3波に向けた準備の一助となるよう調査を実施した。
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《アンケート結果より》
1.リモートワークで使われたデバイスやツール
冒頭でも述べたが、広告業界では以前から「働き方改革」というテーマで、「リモートワーク」や「社内外とのコミュニケーション支援」を目的としたICT環境の構築を進めてきており、徐々にその環境が整ってきているところであった。そのおかげで緊急事態宣言が発出された際も、比較的スムーズにリモートワーク環境を立ち上げ、自宅でも業務が行える体制を整えることができた。
今回、各社がリモートワークに使用した主なデバイスおよびツールは次の通りであった。
(1)デバイス
①会社貸与モバイルPC(Windows、Mac)
②会社貸与スマートフォン(Android、iPhone)
※個人所有PCやスマートフォンは、今回の非常事態宣言にともなう臨時措置として暫定的に利用を許可したところがあったが、あくまでも限定的な利用にとどまった。
(2)ツール
①Web会議
-Teams(主に社内会議で利用)
-Zoom、 WebEx(主に外部との会議で利用)
-V-CUBE、desknet’sNEOなど
②ビジネスチャット
-Teams、Skype for Business
-Slack、Chatwork、LINEなど
③グループウェア
-O365
-G Suite、desknet’sNEOなど
④オンラインストレージ
-OneDrive
-Box、Dropboxなど
2.事前に準備していたリソースでは不足が発生した
全社一斉にリモートワークを実施するということで、事前に準備していたインフラでは足りない状況となったところが多数あった。そのため各社は次のような施策を実施した。
①リモートワーク用PCの追加導入
これまでは「働き方改革」という観点で、現場系を中心にリモートワーク用PCが配置されていたが、今回の事態で本社系業務の担当者にモバイルPCが必要となった。
②リモート接続用 IDの増強
全社員がリモート接続できるように、VPN*接続ライセンス数を増強した。
*VPN:Virtual Private Network
インターネット上に仮想の専用ネットワークを作ることで安全な通信を可能にする技術
③通信回線の増強
VPN利用ユーザの増加にともなうVPN接続用回線の増強や、社内からのWeb会議参加の増加などによりインターネットアクセス用回線を増強した。
④スマートフォン(モバイルWi-Fi含む)のデータ通信量の増強
スマートフォンを利用したWeb会議の参加やスマートフォンのテザリング機能を利用したインターネットアクセス(自宅にインターネット環境がない場合)の増加にともないデータ通信量の契約を見直した。
⑤在宅勤務環境の整備
オフィスでの生産性を個人宅で実現するためにディスプレイ、プリンター、ヘッドセット、スピーカー、高速インターネット(モバイルWi-Fi)などそれぞれの環境に応じた機器が必要となったケースが多く発生したが、これらの機器を会社が貸与するか個人が調達するかは会社によって対応が分かれた。
また、非正社員(主に派遣、常駐業務委託など)に対しては、あくまでオフィスへの通勤が前提となる雇用形態であったがゆえに、デバイス貸与や社外への持ち出し、VPNライセンス割り当てなどの対応に苦慮する面もあったようである。