第54回 懸賞論文 受賞者 河野 瑞夏氏

第54回懸賞論文 新人部門

「私の言いたいこと」(テーマ自由)

ronbun2025_09

河野 瑞夏

電通

第8マーケティング局 グローバルブランディング2部 プランナー

『「クィアする」広告というアイデンティティ・ポリティクス』

プロフィール

2000年生まれ。国際基督教大学卒業。LGBTQ+、女性のウェルビーイングに関心を持ち、自身の経験から摂食障害に関連するコミュニティの運営や発信を行う。2024年よりプランナーとして化粧品、宝飾品分野でのプランニングに従事。

受賞コメント

見ることができる。聞くことができる。言葉を理解し、使うことができる。
社会にすがたを現す手段を持つ特権性を、この業界に身を置いてから一層強く感じています。広告はすべての人に開かれた場所だからこそ、想像力をもって仕事をしていきたい。そんな自分自身との約束をこの論文にしたためました。
この度は栄誉ある賞をいただき、ありがとうございます。関わってくださったすべての方に心より感謝申し上げます。

審査員からのコメント

昨今では多様性を表象した広告も随分みられるようになったが、本論の筆者はそこにも新たな抑圧の再生産を指摘する。つまり固定化された概念を打破しているとみられるものが、実は新たな抑圧を生んでいるというジレンマである。そのジレンマを解決する手立てとしては、「分かりやすさ」を一旦手放し、移ろい変化する状態のままでいかにコミュニケートするか、「多様性」という遠大なテーマに執筆者は真正面から取り組んでいる。

フロンテッジ 中西知行

広告という、広く人に伝えるために作られた環境の中で、脱権威的な価値観をどう醸成させることができるのか、非常に難易度の高い試みに、チャレンジされている。まずその姿勢に拍手を送りたい。また主張されているアプローチは示唆に富んでおり、その実現性も感じ取ることが出来、秀逸であった。

オリコム 水科宗作

本論文は、広告におけるセクシュアリティの表現を題材にしながら、昨今の無批判な「多様性礼賛」とは異なる、より広くメタ的な視点を提示しています。特に、セクシュアリティの表象が新たなステレオタイプを生み、それが結果的に別の抑圧を生む可能性があるという指摘は、現代の広告が抱える構造的な問題を鋭く捉えています。その上で、この構造を超えるための概念として「クィアする広告」を提唱するまでの論理の展開と実現における3つのアプローチは堅牢で、非常に説得力がありました。

マッキャンエリクソン 吉開陽

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