「アートディレクターって面白そう」と思わせてくれる作品であった。デジタル技術の進化がもたらした変化を「デジタルの民主化」と称し、「脅威」ではなく「専門分化したデザイン領域を横断して本質を目指すものにとってのチャンス」ととらえ、将来性に期待を抱かせる。「脱領域的・領域横断的な姿勢を進化させ、デザインが提供する価値を拡張する」ことは簡単ではないかもしれない。それでも「理想論にすぎない」と思わせないのは、著者自身が覚悟をもってその実現に取り組んでいるからであろう。それが伝わってくることがこの作品に力を与えている。