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株式会社 セプテーニ / Septeni Japan株式会社
マーケティング戦略本部 プランナー

橋本 杏佳音

「顔の見える野菜、顔の見えない広告」

 

生産者の顔が見える野菜。スーパーで作り手の写真が載ったパッケージやポップを見たことがない人はいないだろう。

 

日本の消費者は安全性や品質に対してかなり厳しい目を持っており、スーパーで野菜を買うときはその野菜が傷んでいないかの確認はもちろん、産地を気にする人も多い。そんな時、商品に添付された笑顔のおじさんの写真を見ることで潜在的に「これは安心できる」と商品を手に取ってもらいやすくなる。

 

モノが溢れかえる現代において、この「商品の安全性や品質」を期待する目はもはや食品だけに向けられるものではないだろう。
さて、私たちが仕掛ける広告施策の中でよく使われる手法としてWEB動画広告がある。

 

視聴態度の観点から、受動的に情報を摂取するTVやOOH媒体で配信されるものと比較し、能動的に情報を取りにいくことの多いWEBメディアで配信される動画広告は、より視聴を阻害されているように感じることもある。そのため、いかに視聴者の気を引き見続けてもらえるかが目標達成のためのカギとなる。

 

そうするために、クライアント企業の伝えるべき情報を精査し、狙ったターゲットの心を動かすメッセージで訴求している。
一方で視聴者にとって、それは誰の言葉として受け取られるのだろうか?

 

例えば映画やアニメ、音楽PVはその制作に携わった人の名前が明示されることにより、「誰の作品であるか」が視聴者の視聴態度や期待度にも大きく関与すると考えられる。しかし、広告はそうでないのが現状だ。広告業界以外の人からは、広告の発する言葉はどうしても顔の見えない、実態のないところから発せられたもののように受け取られてしまっているように思う。そして結果的に、胡散臭く思われたり鬱陶しいものと煙たがられたりする場合がある。

 

そんな状況を打破し、企業からのメッセージを受け取られやすくするために、①著名人やKOLを商品の顔として立てる②SNSの「中の人」のような形で企業の担当者を立たせる、というものが既に手法として一般的だが、私はそこにもう一つ、③動画の作り手である私たちこそが信頼を与える顔となる、という手段の可能性を考えてみた。

 

例えば広告業界の人のみぞ知るクリエイターや監督たち。商品を伝えるその表現にこそこだわり抜き、多くの消費者の心を突き動かすその人たちが一般的には明かされることのないことを私は少々もったいなく感じているのだが、彼らの存在が、今までにない興味の引き方を生み出し、それが商品やサービスと消費者との新たな出会いに繋がっていくこともあるのではないか。

 

私たちはあくまで顧客の陰の存在ではあるが、決して商品に責任を持たないということではない。広告は商品の一部になりうる。顔の見える野菜のようにその商品の信頼性を示すことを任された者として、信頼ある情報の送り手として、どう在るべきか、どう在れるのか。私たちはこれからも頭を捻らせる必要がありそうだ。

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