「広告業界病」
憧れの広告業界で働き始めて早4年。私は広告業界病になっていた。
普段、素晴らしい広告界のレジェンドの方、全知全能なクリエイティブディレクターの方、得意先の考えを熟知している営業の方、刺激の強い代理店の同世代プランナーの方と、仕事をしている私は、1人のプランナーとして必死に食らいつきたくて、SNSでは常に最新情報を摂取し、面白いと思ったことは即保存。好きなイベントにはせっせと足を運び、流行りの場所にはすぐに行く。毎日なんとか頑張って、気づいたら4年が経っていた。
だんだん“プランニング”とは何なのかが分かってきて、『この目的を達成するには、これとあれが必要!』『こんな状態を作るには、これとあれをやるべき!』と、今まで貯めてきた知識や経験が、少しずつ仕事に活きるようになってきて、今まで以上に仕事も広告も好きになった。
そんなある日、大学時代の友人に、いつも打ち合わせで出るような“オモロ事例”の話をしたところ、『へ~!そんなのあるんだ!』と言われた。広告業界では誰もが知る、あの“オモロ事例”。そっか、伝わってないのか!と思った。
私はいつのまにか、広告業界病になっていたのだ。毎日必死にもがくあまり、狭い世界でしか考えられなくなっていた。感度の高い人達が評価すること、面白いと思うこと、スゴイと思うこと、これらはあくまでも“感度の高い人”に届いているもので、生活者には届いていないことが多いと、実感した。
さみしい話だが、大抵の世の中の人は、広告に気づいていないし、気にしていない。そんな人たちにも、きちんと情報を届け、広告の役割を果たすにはどうしたらよいのだろう。
入社して間もなく、プランナー1年生だった時、憧れの先輩に言われた言葉がある。『その感覚。フレッシュで何にも染まっていない脳。それを大事にするんだよ。忘れてしまうものだから。』まさに、忘れてしまっていたのかもしれない。
『得意先の想いをうまく表現しているね!』『新しい仕事だね!』と、業界の中の好事例として評価されることはもちろん大事だし、とてもうれしいこと。だが、自分の家族や友人など、一番身近な人達に、『あー!あれ!みたみた!素敵だよね!』と言われるような、心に響いて、きちんと “届く”コミュニケーションを作っていけるプランナーになりたいし、なろうと思った。