JAAA DE&I委員会(以下、DE&I委員会)では、2024年11月に『DE&Iクロストーク』を開催いたしました。イベントはジャーナリストの浜田敬子氏からのキーノートと広告・メディア業界からの参加者によるクロストークの二部構成で実施しました。本稿ではイベント当日の様子をお伝えします。
『DE&Iクロストーク』
開催日:2024年11月12日(火)
テーマ:広告×メディアのみんなで考える、わたしたちをとりまくジェンダーの課題
会 場:University of Creativity大マンダラ
<イベントロゴについて>
多様なバックグラウンドを持つ人々が
ひとつの場に集まり、
それぞれの考え方に向き合い、
交わり、対話するイベントであることを、
色とりどりの吹き出しを用いて
ビジュアライズしました。
デザイン:東急エージェンシー POZI
司 会:細谷 由美子 氏 (株式会社大広 /JAAA DE&I委員会)
口羽 敦子 氏
(dentsu Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサー/
JAAA DE&I委員会委員長)
第一部|キーノートセッション
「なぜ組織にダイバーシティが必要なのか〜意思決定層に女性を増やすためには〜」
浜田 敬子氏(ジャーナリスト)
浜田氏は朝日新聞記者からキャリアをスタートし、AERA編集部では記者から副編集長・編集長を歴任。Business Insider Japan統括編集長を経て、現在はフリージャーナリストとして活動しています。キーノートでは、ご自身の経験を基に、DE&Iが企業の成長と競争力に不可欠であると指摘しました。
日本は諸外国と比べて女性管理職比率が低く、両立支援制度の利用者が女性に偏っていること、広告・メディア業界では経営課題としてDE&Iが浸透しておらず、他業界よりジェンダー課題への取り組みで遅れているとし、経営戦略として社内だけでなく業界全体のDE&I推進が必要だと指摘しました。
また、同質性の高い組織では内部からの異論や異質な価値観が軽視されがちなので、競争力の面だけでなく不正や不祥事のリスクも高くなると指摘。同時に同質性の高い組織では過去の成功体験に基づいて判断しやすいため、外部環境の変化に気づきづらいともいいます。さら競争力の観点からだけでなく、DE&Iを人権問題としても考える必要があるという点も強調しました。
日本では2003年、小泉政権下で掲げられた指導的地位における女性比率を30%にするという「202030」が全く達成できておらず、「男性中心」の働き方や企業カルチャーが温存されています。意思決定層に女性を増やすために、そして、男女ともに能力を発揮できる環境を整備するためには、企業内における性別役割分業の見直しが必須であり、そのためには男性には両立支援制度を使いやすくし、女性にはキャリアの支援をしていくことが必要だと述べました。最後には、こうした取り組みを実践している先進企業の取り組みも紹介され、参加者は熱心に耳を傾けていました。
第二部|会場とのクロストークセッション
後半では、5名ほどのグループに分かれた参加者に、以下のテーマについて20分のクロストークを行っていただいた後、各グループから全体への情報共有を行いました。
<クロストーク①あなたの会社のDE&I推進のバリアは何ですか?>
ある男性の参加者は、自身の1人目のお子さんが生まれた時は育休を取らなかったそうですが、当時のことを振り返り、2人目の際は育休を取得され、それがとても良い経験になったとお話しされました。この経験を踏まえ、性別に関わらず育児休業取得を推進していきたいとしており、社内では育休取得者を積極的にサポートするようにしていると言います。また、別の方は組織内の業務・引継ぎプロセスの改善や柔軟な働き方の導入に言及しました。また、多様な視点での正義がバリアになる可能性や、女性のキャリア進展における課題についても議論され、参加者の間では、組織文化の変革、男性の育児参加促進、柔軟な働き方の導入などが、ジェンダーダイバーシティ推進に重要であるということを確認しました。
<クロストーク②意思決定層のジェンダーギャップを埋めるには?>
続けて2つ目のテーマでは、各社の取組も踏まえて、意思決定層のジェンダーギャップを埋めるために、現状の課題や突破口となる可能性のあるアプローチを主な論点として話し合いました。
その中で、多様な働き方のロールモデルの必要性、育児と仕事の両立、女性管理職の増加、そしてマッチョイズムを感じる企業文化の変革などが挙げられました。ある参加者は、短期的な利益重視が中長期的な多様性やイノベーションを阻害する可能性を指摘しました。また、フィンランドの例を挙げ、ウェルビーイングとダイバーシティの重要性を強調しました。また、意思決定層に多様な経験を持つ人材が必要であると主張し、ロールモデルの重要性を強調するグループ、外部の役員・外部識者からの意見を取り入れることや、得意先の変化に応じた女性のフロントライン進出の可能性について言及したグループもありました。
特徴的な取組みとして、役員や管理職に影のようについて回る「シャドウイング研修」が紹介され、リーダーの意思決定プロセス、マネジメントの様子を見ることができたことで、自身が管理職になるための心構えをすることができたとの経験談が共有されました。そのほかにも、経営層と現場リーダーとの共通認識を深めるところから、ジェンダーダイバーシティの課題解決の糸口が見えてくるのではというお話もありました。
今回のイベントでは、キーノートからクロストークまで、ジェンダーダイバーシティの課題解決に向けた情報交換を行い、終了後はネットワーキングの時間も設け、時間いっぱいまでのご交流が続く中、盛況に終わりました。
イベントを通して参加者の間では、制度に基づく数値目標という「ハード面」と、各社の研修などの「ソフト面」の両面からのアプローチが、ジェンダーダイバーシティの推進に重要なポイントなのではという方向性のひとつが見えたのではないでしょうか。
当日ご参加いただいた広告会社、メディア各社の皆さま、誠にありがとうございました。
ご参加いただいた皆さまが各社にこの日の話を持ち帰り、少しずつ課題解決に取り組んでいただければ幸いです。
DE&I委員会では、今回のテーマ「ジェンダーダイバーシティ」に限らず、今後も様々な角度から皆さまとDE&I情報のシェア・意見交換ができればと存じます。